新た
料理
余寒厳しき折から、今年は新型肺炎やコロナウイルスなど、不安なワードでニュースが溢れていますが、皆さまお変わりございませんか?
インフルエンザもまだまだ心配な時です、どうか御身体おいといください。
さて節分も過ぎ、世間はバレンタインに向けてあちこち華やいでいますが、とみたは一足早く「雛祭り」の献立に変わっております。
ピンク色が可愛らしい桜を飾り、女の子の節句に合わせて、文字通り花を添えました。
雛飾りにも「左近の桜、右近の橘」と称して飾りますが、桜には魔除けや邪気払いの効果があると言われているんですよ。(因みに橘は不老長寿です。)
菱餅に見立てた「ひし玉子」はほの甘く優しい口当たりに。
子どもが将来の道をよく見つけられるよう願った飯蛸は、新たな空気を吹き入れるよう西洋の料理をとみた風にアレンジしています。
色味を消さないよう出汁で炊いた1本筋の通ったツワブキは、もしかしたら観賞用として有名かもしれませんね。
もとは九州の一部地域を中心に西日本で食用とされてきたので、馴染みのない方にとってはフキと混同してしまうかもしれません。
まさにこれから、早春に楽しみな“蕗の薹”が出来るのはフキで、ツワブキには出来ませんよ。
それから最近、すっかり定番となりつつある手毬寿司。
コロンとしたフォルムと、アレンジの幅が広いのも魅力です。
今回は比較的シンプルに、木の芽をあしらい春の香りをお届けする一品に仕上げました。
しかし近年は、キャラ弁なども特段珍しいものではなくなってきている為、ご家庭で作る際にはいかに可愛くカラフルに仕上げるか、頭を悩ませる親御さんも多いかもしれませんね。
そんな手毬寿司ですが、比較的新しい料理の為か、その歴史やルーツは判然としていません。
一説には、舞妓さんや芸妓さんが一口サイズで食べられるように、京都で作られたとも言われており、なるほどありそうな話だと納得です。
現状それを確かめる術はありませんが、もしその通りなら、やはり色鮮やかで華やかな世界に縁ある料理と言えそうではありませんか。
同じく定番化しているちらし寿司と同様、雛祭りにこれらの料理が食べられる直接の由来はありませんが、料理の可愛らしさや華やかさ、場合によってはその材料でのゲン担ぎなど、新しい文化として取り入れられ根付いていくのも必然と言えそうです。
最後に、無いと寂しい甘酒は、昔から多くの人に愛されてきた、健康にも嬉しい飲み物です。
こと雛祭りに関しては白酒の代用品として扱われやすく少々不憫ではありますが、子どもの節句にアルコールというのも、いかがだろうかと考えてしまうのはいつの世も同じ。
夏の風物詩として甘酒が人気だった江戸時代でも、桃の節句に甘酒を供するのは一般的でした。
最近はスーパーやコンビニのドリンク棚などにも、色々な種類が並んでいますよね。
昔とは多少姿を違えても、人気を博したものや愛されたものというのは、案外時代を変えても風化せずに根付いていくものだと思わされます。
文化を継承していくことは大事ですが、時には応用することも肝心です。
当店は基本的に、昔ながらの伝統的な和の文化を大事にしていますが、時代や生活スタイルに合わせて季節行事の取り入れ方が変わっていくのも当然でしょう。
とみたには、ちょっぴりクラシカルな趣きを楽しみにいらしていただいて、それをきっかけに、皆さまにも皆さまにあった歳時の取り入れ方を考えていただければ、こんな嬉しいことはありません。
どんな些細な事でも、ちょっとの嗜みが、不思議と豊かな気持ちを生んでくれますよ☆
<文:有桂>