雛祭り
料理
暦の上でも春が立ち北陸からは春一番の便りも届きましたが、未だ残寒去りやらぬ日々、皆さまお変わりございませんか?
インフルエンザも随分猛威をふるっているようです、体調等どうかご留意くださいませ。
さて、節分も終わり、とみたも「雛祭り」をイメージした可愛らしい献立に変わっております。
(こちらでのお知らせが遅れて申し訳ありません。)
料理屋としての都合上、桃の花は料理に飾ることが難しいので、梅や桜の花を添えることが多いですが、「桃の節句」という名に相応しい、華やかさと愛らしさに拘ったコースです。
同時に(献立を考える時はいつもそうなのですが)、当店にお越しくださる皆さまのお顔を思い浮かべながら、今、召し上がっていただきたいものは何か…
今、喜んでいただけるものは何か…
など、じっくり考えていった際、今回はひとつ「洗練されたシンプル」というのも浮かびました。
早春の瑞々しい繊細な素材にはそれにあった向き合い方があり、これからの時期人々が欲しいのも、どこかホッと綻ぶような、優しい雪解けを思わせるような穏やかさではないかと考えました。
勿論、一概に言える事ではありませんが、少なくとも当店にいらしてくださる間は、円く和やかなひと時をお過ごしいただければと思います。
ところで雛祭りといえば、皆さま何を思い浮かべますか?
雛飾りは勿論、ひなあられや白酒、ちらし寿司あたりを浮かべる方が多いのではないでしょうか?
今回はその中でも、名前だけはよく聞くものの飲む機会の少ない「白酒」のお話を…と思ったのですが、代わりに今回コース内でもご提供している「甘酒」のお話を少ししたいと思います。
甘酒には、ざっくり「麹」から作る甘酒と「酒粕」から作る甘酒がありますが、酒粕はアルコールを含むので、今回当店では麹甘酒をご用意しました。
甘酒と言えば、俳句では夏の季語であるくらい、江戸時代には夏の風物詩として知られていましたが、アルコールを含む白酒の代わりに桃の節句でふるまわれたり、お正月に神社で配られたりと、今ではあまり季節を問わず親しまれていますよね。
近年は「飲む点滴」とも称され、健康ブームで注目されていますが、実は江戸時代でも健康食品として広く知られていたそうです。
疲労回復の効果も注目され、かの有名な赤穂浪士が吉良邸討ち入りの後、立ち寄った乳熊屋で労をねぎらい振舞われたのも甘酒(甘酒粥)でした。
酒蔵が夏の副業として作っていたともされる夏の甘酒売りは非常に人気で、幕府が国民の健康を守る為に、誰でも安価に手に入れられるよう価格設定をしていたというのですから、現代より良心的かもわかりませんね。
当時1杯4文(幕末は8文くらいまで値上がりしたようですが)を上限としていたそうなので、現代の感覚だと凡そ100円くらいでしょうか。
他に、納豆1束・串団子1本・大福餅1個・子どもの銭湯代1人分・1枚物の瓦版などが、同じく平均4文
有名な二八蕎麦が1杯、2×8=16文
街道の茶屋のお酒が1合32文くらい
と考えると、確かに庶民にも手を出しやすかったかもしれませんね。
現代でも、昨今のブームもあってか色々なところで売られていますから、寒暖差の激しいこれからの時期、ぜひ健康維持に一役買っていただきたい1品です。
今は炊飯器もありますから、ご自宅でも比較的簡単に作れる麹での甘酒は、アルコールも無ければお砂糖も要らないので手作りもおススメですよ☆
最後に今日は春の便りの写真も1枚。
つくしが採れる時期になりました。
確か昨年のFacebookでも、袴取りなどをしたことがないスタッフもいる話を書いたのではないかと思います。
言われてみればスーパーなどでも売っていないので、なかなか食べる機会は少ないかもしれませんね。
もしつくしを摘める環境があれば、皆さまもご自宅でお試しくださいね。
少量なら、小さなお鍋かフライパンで天ぷらにして、揚げたてをキッチンで頬張るのも(お行儀はこの際さて置いて)今の時期ならではの楽しみとして案外乙なものですよ☆
(文:有桂)