風薫る
料理
桜若葉が瑞々しい今日この頃、皆さま如何お過ごしですか?
桜のシーズンはとみたにとっても思い入れの強い季節ですが、それも束の間…
ついに元号も変わりますから、この辺りで気分も一新、和かな風を感じてスタートしたいですね。
では早速、「端午の節句」の献立です。
元々は、年の最初の午の月、午の日に行っていたことからこう呼ばれていますが、別称は「菖蒲の節句」。
この時期は大事な田植え前ということもあり、物忌みや厄払いの目的が強かったようです。
健康祈願の薬玉(香りの強い葵や菖蒲、蓬などの薬草を丸く固めて飾りをつけたもの)を作り、贈り合ったりもしていたようで、今話題の万葉集にも登場していますよ☆
「時ならず、玉をぞ貫ける卯の花の、五月を待たば、久しくあるべみ」
(まだその時期ではないのに、玉を通す卯の花が咲く五月を待っていたら、とても待ち遠しくなってしまいます)
「五月の、花橘を君がため、玉にこそ貫け、散らまく惜しみ」
(五月に咲く橘の花を、あなたの為に玉にして、紐に通しておきましたよ、散ることが惜しいので)
しかし武士が台頭し始めると「菖蒲」が「尚武」(=武をたっとぶ)に通じるとして、江戸時代になる頃には男児の節句になりました。
“勝男”に通じる“鰹”や、すくすく育つ“筍”など、縁起を担ぐ料理はお馴染みですね。
おせち料理と同じで、語呂合わせや、食材の生態にかけたり、魔除け厄除けの効果がある赤色や、教養が身につく巻物を模したものなど、様々なものに人々の思いが込められています。
また日本も、中国で提唱された陰陽五行思想が強いので、必然、日本文化と陰陽五行は切っても切り離せない関係です。
五色の吹き流しの五色「赤・青・黄・白・黒(紫)」も、五行説由来ですね。
(因みに、同じく節句の一つ、七夕の「五色の短冊」も有名ですよね。)
今回の献立の中にも随所に組み込まれておりますので、色味も含めてお楽しみください。
また、夏も近づくと思い起こされる「♪夏も近づく八十八夜」というフレーズ、これはあまりにも有名ですね。
立春から数えて八十八日目(今年は5月2日です)に摘んだお茶を飲むと、健康で長生き出来ると言われています。
江戸時代の頃から「初物七十五日」といって、初鰹や新茶など、初物を食べると長生き出来て縁起が良い、福が来ると言われていました。
実際に旬のものを食べると、その季節にあった必要な栄養素が摂れるので、その時期に合った体が作られ健康的な生活が出来ると考えられています。
当店もおかげさまで、やがて12年目を迎えます。
そんな幸せを皆さまにもお福分け出来ますよう、心ばかりの気持ちも込めまして、季節の風をこれからもお届けいたします。
<文:有桂>