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招涼の珠

料理

相変わらず蒸し暑い日々が続きますが、皆さまお疲れなど出ておりませんでしょうか?

今年は梅雨疲れという言葉も聞かれます。

これから来るは夏本番。

バテてしまう前に、ゆっくり休息をとりつつ過ごしていきましょう。

 

 

新しい献立です。

夏の暑さに参ってしまわぬよう、「とみたの“りょう”」を感じ、味わっていただきたいと出来たコースです。

本来なら土用照りの頃ですが、日照不足等相まって、夏野菜の高騰が嘆かれている最近…

ですが正直暑さが厳しい時にこそ、ビタミンカラーの鮮やかな野菜たちをたっぷり食べられたら嬉しいですよね。

食欲が落ちている時でも、お野菜ならさっぱり食べやすいのではないでしょうか☆

コースを通して、食べやすく、あまり元気が無い時でも不思議と食欲がそそられる様なお料理を集めております。

少しの工夫で、ぐっと食べやすくなったりするんですよ。

そして料理に一手間加えるのは勿論、意外と効果があるのが見た目です。

前菜では、まだ露に濡れた草木が光る、大将が毎朝出かける山中の景色を表現しました。

中国の故事に「招涼しょうりょうたま」というものがあります。

これは、“持っていると夏の暑い時でもたちまち涼しさを招きよせる”という不思議な珠だそうです。

そんな素敵なものがあるなら今すぐ欲しい!というのが本音ですが…

日本にも伝わり、詩などに読み込まれているのを見ると、どうやらささやかな水滴に「招涼の珠」を感じていたのだと分かります。

 

月やどる 岩井の水を むすぶ手に すすしさまねく 玉ぞこもれる(源仲綱)

 

石の上に 落ちたる滝の かずかずに すすしさまねく 玉と見えつつ(藤原為顕)

 

詩中の「玉」が招涼の珠のことですね。

情緒の無い言い方で恐縮ですが、岩の湧き水に招涼の珠がこもっているとか、落ちる滝の飛沫が招涼の珠に見えると詩っています。

残念ながら、実際に招涼の珠を得ることは出来ませんが、自然の中、私たちの生活の中には、小さな涼しさを感じる一瞬一瞬が多く溢れているのかもしれません。

ぜひ、とみたの献立の中にも、招涼の珠を感じてみてください。

 

<文:有桂>