間を読む
料理
今年は本当に台風の当たり年で頻発しておりますが、気圧の変化等で体調を崩されている方はいらっしゃいませんか?
寒暖差も激しく中々落ち着きませんが、秋の暮れが近付き少しずつ安定してくる頃かと思います。
読書の秋、芸術の秋、スポーツの秋、食欲の秋…
それぞれの秋を満喫しながら、皆さま御身おいといくださいませ。
さて、とみたの料理も、秋深く様変わりしておりますので、おなじみ前菜の写真と共にご紹介いたします。
定番となりつつある林檎の豆乳焼きは、急に気温が下がりだすこの時期には嬉しい、温かいお料理です。
前菜に温かい料理が登場し始めると、いよいよ冬がやってくるなぁという気持ちになりますね。
人は時に驚くほど単純なこともあるもので、お腹の中からぽかぽかと温まると、気持ちもほっこり柔らかくなれたりいたします。
当店でのひとときも、皆さまにはぜひ心和やかにスタートして頂ければと思います。
小さな柿の実を模した料理や、木の葉のように仕立てた南瓜、菊の名残りを味わう料理…
庭の草木も綺麗に色付き、一皿一皿の演出に一役も二役も買ってくれます。
紅葉した葉のことを「照葉」ともいいますが、「照る」とは第一の意味に「日や月などが光を発する」とありますから、なるほど情景が華やぐのも納得です。
暮れの秋、少し物悲しい雰囲気も漂うこの時期ですが、錦織成す秋の集大成。
その名残りを惜しみつつ、今の風情を存分に堪能していただけますよう、目にも楽しいお料理を味わえるコースとなっております。
ところでその昔「てふてふ」と書き表された「蝶々」という可愛らしい生物は、春の印象が強いものの、実は年中見られることをご存知ですか?
その為、蝶は春の季語ながら、夏・秋・冬にもそれぞれ「夏の蝶」「秋の蝶」「冬の蝶」と季語がございます。
季節によって、同じ生き物ながら、大分印象が変わるのも面白いですよね。
また「胡蝶」と称した時、このか弱く儚げにみえる生き物に、文化的意味がついてくるのも興味深いところです。
「胡蝶の夢」はあまりにも有名ですね。
他にも文学や芸能を挙げれば数多く、家紋や婚礼など古いしきたりが根強く残る場面などの装飾品にも、蝶を象ったものは多く登場します。
蝶は何かへの導きとか、亡くなった人の霊を運ぶとか…キリスト教における命の復活や、仏教における輪廻転生まで、様々なイメージを持たれてきました。
アメリカ先住民にとっては、神のもとへ願いを届ける使者とも捉えられていたというのですから、小さな見た目とは裏腹に、人々に大きな思想の余地を喚起させる不思議な生き物です。
葉のような虫と書き表された蝶ですが、艶やかな木の葉の合間を揺蕩う様は、意外にもこの時期にぴったりではないでしょうか。
存外神秘的で、大きな可能性を秘めたるこの小さな生き物が、とみたの料理から料理へと“てふてふ”と(ここはぜひ、力を入れない円やかな文字通り“てふてふ”と読んで☆)舞う様子を想像しながら、皆さまの幸先も誘う案内役となってくれたなら──そんな思いが溢れてくる今日この頃です。
<文:有桂>