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月露

料理

前菜1

 

 

立て続けの台風、皆さま被害は大丈夫ですか?

残暑厳しい折から、雨に風にと、中々天候が落ち着きませんね。

今年の竜田姫は随分奥ゆかしいようですが、それでも着実に秋の実りは届いています。

 

前菜中

 

とみたも秋の盛りを満喫する、新たな献立に変わっていますよ。

最早定番ともいえる柿釜の白和えに吹き寄せが華やかな前菜から始まり、今の、これからの景色を一皿一皿丁寧に描いたコースです。

 

しばし情景の世界に浸ってみてください。

青魚の美味しい季節、鰯雲や鯖雲、鱗雲などと呼ばれる小さな雲の群れが高い空に見られようになってきました。

これは天気が崩れる前兆で、実際に豊漁になると言われていますが、この空を見られている間は大丈夫でしょう。

そんな行楽日和に持って出かけたくなるのは、山の神の力を授かる為に、山の形を模して握られたといわれている“おむすび”。

桜は散るといいますが、萩はこぼれる…そう表現されるのも納得の、ほろほろと儚く溢れるように咲く小花に包まれて野山を散歩。

川面に照葉が落ちて波打つ様子は、錦の波。

春は山笑い、夏は山滴り、秋に山粧やまよそおうとは、一体誰が言い始めたのでしょうね……

 

さらさらと囁き声が聞こえたら、ススキが風に揺れています。

今年の十五夜、楽しめた地域の方はどれくらいいらっしゃるのでしょうか。

秋の満月を楽しむ文化はアジア圏には馴染みのあるものですが、日本ならではなのが「十三夜」のお月見。

のちの月や、二夜ふたよの月、月の名残りとも呼ばれています。

ここで一つ、徒然草の名文句を引用しましょう。

「花は盛りに、月はくまなきをのみ見るものかは」

(桜の花は満開の時に、月はかげりのない満月の時にだけ見るものでしょうか、いや、そうではありません)

さらにこちらは、西行法師が十三夜に詠んだ句です。

「雲きえし秋のなかばの空よりも 月は今宵ぞ名におへりける」

名に負へるとは、その名に相応しく素晴らしい、という意味ですね。

十三夜のお月見の火付け役となったのは、その月を「無双」(この世に二つとない、肩を並べるものがないほど優れている)と賞した宇多法皇だといわれています。

 

後に日本文化として確立していく、「わび」「さび」、「数寄」や「幽玄」などの言葉にも表現されてきた、日本人の心を掴む「不足の美」。

不等辺三角形を基本とする華道・生け花に、余韻や間を大事にする音楽や古典芸能…シンメトリーで人工的な美しさを追求した西洋の建築物や庭園に対し、アシンメトリーで自然との調和を意識した日本…

不均衡なものや、簡素なものに余情を感じる美意識は、私たちの心にすっかり根付いているようです。

 

最後は、侘茶の大成者、千利休が特別好んだとされる秋の膳の茶菓子「麩の焼き」でコースの締め括りです。

利休が開いた茶会の多くを記した「利休百会記」に、88回中68回も登場するこちらのお菓子。

その素朴な味わいに、利休は何を感じ、どんな思いを込めたのでしょうか。

情趣深くはかりしれない世界を、不完全なまま愛することが出来る私たちには、野暮な問いかけかもしれませんね。

 

とみたの秋の旅、ぜひご堪能ください。

 

(文:有桂)